約 5,047,812 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1001.html
楽しい、来客──あるいは葵の日常 今日もMMSショップ“ALChemist”は大盛況~♪……と言いたいですが 地下にある玄人向けのお店ですから、平日は割と静かな環境ですの。 あ、申し遅れました。わたしは神姫三姉妹の次女・ロッテですの~♪ ……マイスターが忙しい時は、レジでお留守番するのが日課ですの。 それはHVIFを使って“葵”となっている日でも、代わりません。 「消化不良には大根ですか~……晶お姉ちゃんにも実践ですのッ」 「……や。見るからに外国人の少女が、主婦御用達の情報番組ね」 「ふぇぇぇっ?!あ、お客様……い、いらっしゃいませですの♪」 にゅっと顔を出したお客様に突っ込まれましたの……一応接客業ですし 実際の昼食は遅めにしているので、ついついテレビを見てしまいます。 そのお客様は、ラフな服装の男性とハウリン……に限定版ストラーフ。 ハウリンさんが訝しげな表情をしましたけど、初めてのお客様ですの。 「へー、ここがMMSショップ“ALChemist”……素直に言うと、狭いね」 「……マイロードー?それは幾ら何でも失礼じゃないでしょうか……」 「だって、ここの店長さんに俺蹴られてるし。結構痛かったしさー?」 「あの姿で怖がられない方がよっぽどだと思うぞ、主よ?して、娘や」 「はい、なんでしょうか~……って、この耳を貸せばいいんですの?」 何やら言い合いをしていたお客様から、白いストラーフがわたしの方へ テーブル伝いに歩いてきて、手でわたしを招き寄せましたの……何かと 思い、耳を貸してみましたが……その直後でしたのッ!こう、ぬるっと 暖かく柔らかい神姫の人工舌が、細い手に支えられたわたしの耳をッ! 優しく艶めかしく、水っぽい音を立てながら……隅から隅までぇっ!? 「ふぁあ……あ、っ!?ひあ、やぁんっ!な……なッ、何を~!?」 「ふふ、神姫の様に可愛らしい娘だったのでな。つい食べたくての」 「う゛……そ、そんな煽ててもちょっぴりしか安く出来ませんのっ」 「あーすまん。うちのディス、男女も人・神姫も見境ねーんで……」 「あうあうあうあう……いきなりなんてビックリしちゃいますの~」 勿論、不意打ちのキス……晶お姉ちゃんにする事はあっても、されたのは 当然初めてですの……に胸が高鳴っているのは有ります。でもそれ以上に “神姫の様に”という言葉で、正体を見抜かれた様な気がしていますの。 その所為で、お客様への対応はなんだか相手ペースになっちゃいました。 「しかしマイロード……本当に宜しいのですか?私達なんかの、為に」 「いいってのっ。結局鳳凰杯の時も一つしか買えなかったし……な?」 「遠慮するでない。女子たる者、男に精一杯甘えると良いぞ。碧鈴よ」 「ディス程節操無しじゃありません、私……でも、お言葉に甘えます」 「お客様ー。鳳凰杯って事は……お洋服の見立てでよろしいですの?」 肯く男性。どうやら鳳凰杯のブースへと来てくれたらしいのですけど、 その時は十分な買い物が出来なかったみたいですの。あの混雑ですし。 そうと分かれば……“わたしの逆襲タイム”のお時間ッ!で~すの~♪ 「店長はちょっと工房に入っていますので、わたしがお見立てしますの♪」 「ほう?店長の感性は見知っておるが……それもそれで、楽しみじゃのう」 「って、あの店員さん。何を取り出してるんですか……黒い、フリフリ?」 「はい♪こっちは貴女、ハウリンさん用ですの!ストラーフさんは~……」 「ディスで構わぬ、こっちは碧鈴だ。ほぉう……儂にはこの白と桃色のか」 「はい。“スウィート・デス”っていう、妖しい魅力を持つ衣装ですの♪」 ハウリン……碧鈴さん用には、黒い布地にフリルやレースをふんだんに あしらって、ワンポイントに青い薔薇。ディスさん用には、白い布地に 桃色の飾り布を施して紅い薔薇を胸元に添えた、とびきり高価な衣装。 どちらにも十字架など宗教的なアクセントを施した上で、さりげな~く 胸や太腿など素体部の露出も考慮した、晶お姉ちゃん渾身の作ですの♪ 「う、うわぁ……これを……私達が着ていいのですか、マイロード」 「聞くのは店員に、じゃろ。娘、名は何と申す?悪い様にはせぬぞ」 「本当ですの?……葵、槇野葵と言いますの♪試着、してみます?」 「は、はい喜んで。って……マイロード、こっち見ないで下さい!」 「わーったわーった。後ろ向いてるから何時でも呼んでね葵ちゃん」 男性が背を向けたのを見計らい、わたしは手早くディスさんと碧鈴さんの 着付けにかかります。ですけど、一筋縄ではいかない様ですの……むう。 「んっ♪ふふっ、卑猥な手つきじゃの葵とやら。儂に見惚れたかえ?」 「そ、そんな事無いですのッ!ですよね、碧鈴さん?……碧鈴さんッ」 「やっぱり恥ずかしいかもしれません……こんな胸元が、かぱぁって」 「何、いっそのことそれで主を悩殺してやれば良い。素質はあろう?」 「ですね、碧鈴さん可愛いですから……これで一層引き立ちますの♪」 「あぅぅ……だといいのですけど、心配です……んっ、よいしょ……」 着てきた衣装を脱がして畳み、十二分の一サイズのドレスを着付ける…… HVIFの大きな手でこれらを行うには、ちょっぴりコツが必要ですの。 洋服を着慣れた神姫の場合は、自分でも着られるので楽が出来ますけど♪ なので、ちゃきちゃきとお二人を着付けて……凡そ十五分で完了ですの! 「お客様~、ディスさんと碧鈴さんの着付けが終わりま……お客様~?」 「今週の当たり目ー、ってうおう!?……葵ちゃん、もう終わったの?」 「はい。これでも此処の店員ですから♪ほら、ご覧下さいですの~っ♪」 「う、うぅ……ま、マイロードぉ……そんなにジロジロ見ないで下さい」 「何を言うか碧鈴?じっくりと見せつけてやれぃ、ほれ……どうじゃな」 「うわー……えー、っとだ。葵ちゃん、これ二着で幾ら位するの……?」 暫く視線を彷徨わせた男性が、決済用の電子カードを取り出しましたの。 もう、素直に褒めてあげた方が喜ぶのに……神姫とはそういう存在です。 ともあれ、お値段……告げた途端、真っ青になったのが印象的でしたの。 「うげ……鳳凰杯の時は、こう二周りくらい安くなかった?葵ちゃん」 「あれは廉価版ですの。皆様にお配りする為、企業努力した結果です」 「で、これは採算度外視のハイエンドモデル……それなら納得じゃの」 「そんな高い物を……プレゼントしてくれるのですか、マイロード?」 「……約束だし。でも今月、残業で遅くなるのは勘弁な……お勘定ー」 「はい。有り難うございますですの~♪此方の装飾品も、如何です?」 ──────皆が可愛らしくなってくれる事が、何よりの喜びですの♪ メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1704.html
話は今から遡ること2週間前 7月に入り、形人たち学生がそろそろ夏休みに突入するころの事だった。 いつものごとくメンテナンスショップに詰めている形人とヒカル、他にやる事ないのか。 そんな二人に長瀬が話題を出した。 「そういえば再来週に『神姫のど自慢大会』をやるんだが」 「のど自慢?」 形人の疑問に、ジュラーヴリクが答えた。 「参加料500円!入場無料!! 参加特典にはオリジナルのマイクスタンド マイクをプレゼント!!」 「しかも入賞者にはフルセット神姫が商品になってるんですよ? しかも二位から限定品とかになりますし」 続けてラースタチュカが言う。 「どう?ヒカルちゃん」 「ええ、まあ」 ここで形人、意地悪そうな表情を浮かべ 「さては歌唱力に自信がないんだな? 歌ってるところ見た事無いし」 何て失礼な!?と憤慨。 「自慢だけどわたしをそんじょそこらの子と一緒にしないで!!」 「ほう、なら参加するんだな? 参加申し込みはどこでです?」 「!?」 「ここでも出来るさ、IDカードを」 パッパと参加申し込み、これで14番目の参加者となるヒカル。 「ひどい!! 嵌めたね形人!?」 「いーじゃんか、僕だって一回聞いてみたい。それに戦績が好くないから罰ゲーム」 むっすりとした表情。 「ふふ、楽しみにしてますよ?」 「…もーっ!! 皆のいじわるっ!!」 ~・~・~・~・~・~・~ ひどいよ皆、よってたかってプレッシャーかけるなんて。 自信ないよ…。 リビングのテーブル上で一人背中を煤けさせていると、おかあさんが話しかけてきた。 「どうしたのヒカルちゃん?、電気もつけないで」 もちろんわたしの母じゃなくて、形人のお母さんの令佳(れいか)さんの事。 形人の隣にいる内に呼び方が映ったらしい。 このまま腐ってるのもなんなので、詳しい事を話した。 「あら…形人ったら、最近色々考え事があるといってもヒカルちゃんにあたる事ないのに」 「どうしたらいいかな…? 歌はオリジナル推奨だし、衣装とかも自前だし」 それを聞きおかあさんはニッコリ笑顔で 「なら衣装と音楽は私が作るわ、ヒカルちゃんは詩を考えて」 「え?」 「私はこれでも学生時代は歌作るのが趣味だったし、元は服飾デザイナーを目指してたから自信あるのよ?」 そしてわたしの頭をなでつつ 「いじわるな形人をぎゃふんと言わせましょ?」 …それを聞いて思わず笑った。 「うんっ!」 ……… …… … 以上の経歴で今に至る。 今は大会ゲストのストラーフが前奏曲となる唄を唄っている。 そんな彼女はこの前ニュースで話題となった神姫。 彼女の名はリゼ、 戦いを忘れず、戦うことを忘れた武装神姫 の一人…。 美麗な旋律が奏でるのはややゆったりとした曲、彼女が得意とする唄の一つ。 透き通った声は心に直接伝わり、聴き手の気持ちを安らかなものに変えてゆく。 長めの唄は、わずかな時間で終わったかのように感じられた。 そして、僅かの静寂と共にアンコールが湧きあがる。 リゼはそれを少し恥ずかしがるような表情を浮かべると、一礼してオーナーの元へ。 『それでは、神姫対抗のど自慢大会を開催致します』 火蓋が切って落とされた。 …… "火花散る 光が舞う 刃がぶつかり音立てる" エントリーナンバー4、零牙が歌うのはアニソンテイストの燃えソング。 普段の落ち着き様が嘘のように目が輝いている。 "信念ぶつけ舞いあがれ!!戦う姫、その名は神姫" のど自慢のはずが、まるでアイドルグループのライブの如くアクションしながらの歌唱。 それに呆気にとられる者も少なからず混じっていた。 「ふふ、零牙ったら」 聖憐はそんな中に混じりながら苦笑した。 …… "偽りの声 偽りの愛 プラスティックに包まれたそれは 冷たく聞こえる" エントリーナンバー7、グレースが歌うのは暗めのバラード。 だが作詞・作曲は普段からVOCALOIDによる作品を発表している風間なだけに完成度は高い。 落ち着いた声色のヴァッフェバニーによく合う曲調。 "小さな体は科学の結晶" "昔から見てきた幼い頃の夢" "だけどもそれは機械のかたまり" "意志をもった偽りの友達" …… エントリーナンバー13、マオ。 …はアレな電波ソングのため省略。 「何故だ!? 何故なのニャァァァァァ!!」 「地の文めぇぇぇぇぇ!!」 という訳で14番、ヒカルの番が来た。 (リズムOK、ボリュームOK、オールグリーン) ミュージックスタート。 スポットライトと皆の視線が集中する。 "光が眩しいあの青空 あなたは今どこにいるでしょうか?" 雄大さをも感じさせるPOP、そとて紡がれる詩(コトバ) "わたしにあの高さへと届く 銀の翼があるならば 飛びたちたい あなたの場所へ" "飛んでゆきたい 今すぐ!" 爽やかな歌い口、声。 "遙かな空へ 翼翻し 光る星の彼方へと" サビから一気に持ち上げ、アップテンポに。 "たとえあなたが見えなくても 絶対ね 抱きしめます いますぐに" ワンコーラスを歌い上げた時、早くも拍手が湧きあがった。 「形人、お前初心者のくせにやるなぁ」 「僕は一切関与してない、全部本人とお母さんがやった事だ。…正直驚きだけどな」 ……… …… … ~・~・~・~・~・~・~ 帰り道。 「形人形人~、ねぇどうだった?」 「はいはい、ギャフンとしたって。いつまで聞いてるんだ」 「満足するまで」 「……」 結果はまさかの優勝。 限定販売の神姫が入ったケースが形人の手中にある。 空は暗くなり、星々が宇宙(そら)から転がり落ちたかのように輝き始める。 ヒカルはそれを見て、また一つ唄を紡ぎだした。 "きらり きらり 星が瞬く 今日はおしまい 日が沈む" "家に帰ろう やさしい母元へ 太陽また明日 顔見せて" "空に転がる星の大イリュージョン 今日も見守るあの星は 願い星" "また明日日が昇り 明るい世界 やってくる" 歌詞を見る 流れ流れて神姫無頼に戻る トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/728.html
戦うことを忘れた武装神姫 その27 ・・・T市のとある居酒屋。 カウンターで兎子を前に酒を飲んでいた男に、隣に座るストラーフを連れた男 が話しかけてきた。。。 ・ ・ ・ -おや、あなたも神姫をもっているのですか。 珍しい配色ですね、なんとも 美しい空色で・・・特殊強化塗装でン万・・・? いやはや、その愛情に脱帽 ですわ。 今日がここは初めて・・・そりゃどうも、どうぞよろしく。 -はぁ、ここには神姫愛好者が多く集まるから情報を集めるにはいいと言われ た・・・ なるなる、そうですか。 ほぉ、K屋のリーグで5位に入賞したの ですか・・・それはおめでとうございます。あの店は強豪が集いますからねー。 -え? ウチ? いえいえ、ウチらはバトルはしないんですよ。造った装備の 試験とかで、草リーグに遊びに出ることはありますけどねー。 -・・・何で戦わないかって? -うーん・・・手っ取り早く言えば、神姫の身になって考えると、戦わせられ ない、ってところですか。考えてもみてくださいよ。いくら自分で育てたとは いえ、そいつらを戦わせるんですよ? 基本がそういうプログラムだとはいって も、服従させてるみたいでどうしてもなじめなくって。 -ほら、今も長寿番組でやってるアレ、モンスターを戦わせる、ゲームが元の アニメ- あれもウチはあんまし好きにはなれないんですよ。 結局、オーナー だのマスターだのの、道具でしかない存在でしょ、あれじゃ。 -道具じゃなくて、パートナー・・・。 確かにそうですよね。 でもね、 自分の手を汚すことなく、必死に戦う神姫を離れたところで観戦して、それで 勝ったの負けたのを騒ぐのはどうも納得がいかなく・・・おっと、これは言い すぎましたね。。。 -そんな怖い顔しないでくださいって。 ひとつの考え方としてさらりと流し てくださいってば。 -あ、すんません、生中ひとつとライチサワーを。 あ、おごりですよ。気に せずぐっと行って下さい。 ともかく武装神姫ってぇのは神姫のプロジェクト の中のひとつなわけだし、神姫自体は無理に戦う必要なんて何もないと思うん です。 そうでしょ? -ま、場合によっては神姫自身が宣戦布告したりすることもありますけどね。 少し前にウチの連中も一戦やりましたけれど、あれなんて、こいつがその店の トップランカーにけんか売っちゃっ・・・い、いでででっ!!! ( -ストラーフが、彼の指の股を力いっぱい広げる- ) -悪かったよ、山崎とってやるから許せって。 すんません、山崎12年ロック、 ひとつお願いします。 ・・・あ、そうなんです。 呑んだり食ったりできる ようにちょっといじってありまして。 ( -彼が届けられた山崎ロックを差し出すと、うまそうにすするストラーフ- ) -こいつとの出会いはちょっと特殊だったけれど、ほかの3人はみな一目惚れ ですよ。 -最初は犬猫でしたね。神姫って何かを知らずに買ったんです。 起動させる まで、そう、説明書を読んだ段階では、あくまで戦うロボットという認識しか なかったんですけれどね。 起動させてからはもうダメ。傍に居るパートナー になっちゃったわけで。 -はいはい、おかわりね。お前は前科があるから、あとはサワーを呑むように。 文句いわなーい。 ( -ストラーフの空いた山崎のグラスにサワーを取り分ける彼- ) -だから、時々聞かれたんですよ、初めのころは。「戦わなくていいの?」って。 そのたびに、ウチは「別に戦うだけがすべてじゃない。傍に居てくれるだけで、 それだけでいいんだ。」って答えましたね。 ( -ストラーフ「あたしもヌシさんと居るだけで、それだけでも楽しいもん」- ) -はっはー、そういってもらえるとウチもうれしいねー。 だから、余計な買い ものをしちゃうのかもしれないなー(笑 ( -ストラーフ「あんたも愛情たっぷりの中でやってんじゃん」と兎子に声をかける- ) -ウチもそう思うよー。 何たってヴァッフェバニーっつーとどっちかというと 泥臭い印象が強いけど、ここまでさわやかな兎子さんは初めて見たもんね。 よほどの愛着がないと、そこまでの装備はできないっしょ。 -ありゃ、兎子が泣いてる? ・・・申し訳ないです、なんかせっかくの勝利 ムードに水差すようなことをしゃべっちゃって・・え? 違う? ( -ストラーフが彼に告げる、兎子は今までマスターがなぜそこまで自分に 手をかけていてくれたか、その「愛情」に気づいたんだ、と- ) -あなたの中ではそちらの兎子さん、どんな存在で- ? -でしょ? ね? そこがウチらは言いたかったわけなんですよ!! -いや、いやいやいや、そんなにお礼を言われても・・・そういう人間じゃあ ないですって、ウチは。。。 兎子さんも、そんなに頭下げな・・・ってリゼ! 女王様するんじゃない!! ったく・・・ -ここで語ったのも何かの縁、もうちょっと呑みましょうか。 -ウチがおごりますって。 いやはや・・・じゃぁ、割り勘で! -そうそう。ウチの知り合いに優秀な神姫のメンテ屋が居ましてね・・・ 彼らの話は、終電近くまで続いたという。 ・ ・ ・ それから数ヶ月の後。 K屋のリーグのトップに、ヴァッフェバニーの名があった。 マスターの愛情をたっぷりと注がれた蒼きヴァッフェバニーは、その後公式の リーグでも幾多の勝利を収め、碧空のスナイパーの異名を持つまでになった。 メディアで、インタビューを受けるたびに彼は言ったという。 あの居酒屋で、今でも良き相談相手の「あの」人に出会わなければ、小さくも 大きな「神姫」の「存在」に気づかせてくれたあの夜がなければ、今の僕と、 碧空のヴァッフェ「Blitz」はいなかっただろう、と- 。 <その26 へ戻る< <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1594.html
姫の閉ざされし檻、呪われし高貴(その一) ──哀しみの姫を見据え、しかし怒りより先んじて生じるのは“真心”。 それは今まで生きてきた私達の全存在を、肯定するが為に産まれるエゴ。 しかしエゴでも良い……ただ助けたい。その為には、“知る”事だ──。 第一節:孤独 ロキに掌を撃たれた翌朝……私・槇野晶の手は藤村先生の見立て通りに、 傷の痛み以外は特に何の問題もなく動かす事が出来た。微細な作業は些か 手間取る物の、何事もないという事実だけで十分と言える。故に神姫達と 朝食を取りつつ、私はあのMMS……“ロキ”について整理する事とした。 「むぐ……という訳でだ、もう一度ちゃんとした推論をだな……はむ」 「ああもう、マイスター!喋りながら食べちゃ行儀が悪いですのっ!」 「んぐ。す、すまんなロッテ……しかしここまでせんでも、食事位は」 「ダメですよ?少しでも回復を早めないと、色々大変なんですからっ」 ……なんとも締まらぬ姿で申し訳ないな。ロキについて、話し合おうと 試みてはいるのだが、アルマとロッテが私の肩から退いてくれぬのだ。 『マイスターは手が命』と言い、私に……その、ええと、あれだ。所謂 “あ~んして♪”をな……煩い、笑うなッ!?厚意を無に出来るかッ! 「先生のお話通りなら大丈夫なんだろうけど、念には念を……だよ?」 「クララ、じゃないな……梓までそんな事を言うのか。心配性だぞっ」 「……心配の一つや二つ、当然だよ。マイスターは、特別な人だもん」 HVIFを纏ったクララ……“梓”は、食べ終わった食器をいそいそと 片付けつつ嘆息する。いや、案じてくれるのはとても嬉しいのだが…… どうもこう、な?意識し始めている“心”の所為で、色々とむず痒い。 で、そうしている間にも私の口には梓の焼いたパンケーキが運ばれる。 ……なんというか、人間として色々ダメになってしまいそうだ。むぅ。 「はむ……ん、有無。旨かった……御馳走様、梓にアルマとロッテや」 「ん。そう言ってもらえると、みんなで焼いた甲斐がありますの~♪」 「最近はマイスターも頑張って料理してましたからね、お礼ですよっ」 「……この輪にもう一人、増えてくれる事を今から祈ってるんだよ?」 そう、あれだけの哀しみを抱えた娘をこれから相手取るというのに…… 些か不謹慎な気がせんでもない。しかし、こうして皆の居る“幸せ”を 実感すればこそ、彼女にもこの“団欒”を分け与えてあげたいと思う。 出来る事があり、やる意志があり……微力ながらその為の力さえある。 傲慢でも偽善でも構わぬ。それこそ、私達に出来る最大限の事なのだ! 「となれば、後は幾つ彼女の事を知る事が出来るか……に尽きる訳だな」 「そうですね。あたし達が知っているのは、まず彼女が神姫ではなくて」 「でも神姫のプロトタイプを元に作った、神姫に極めて近い存在ですの」 「製造理由は犯罪。お姉ちゃんの“お姉さん”を殺したのも、テロだよ」 「その一件が汚点となりマスター達を喪い、自身も秋葉原に棄てられた」 同時に彼女は“妹”達をも悉く喪い、“人間”には酷い仕打ちを受けた。 それらの経験と、今まで“愛されていた”という自負の反動で……彼女は 奈落の様に暗く深い“憎悪”へ、その小さな躯を任せる事となったのだ。 食器を片付け戻ってきた梓と共に、四人でロキの“孤独”を再認識する。 「そして、あの娘は人間社会の全てを滅ぼそうとさえ考えてるんだよ」 「でも……ロキちゃんには、まだ迷いがありましたの。その証拠こそ」 「……マイスターが、あたし達を庇った時に見せた動揺……ですね?」 「有無。実際問題、ロキがその気になれば皆殺しにも出来た筈なのだ」 しかし彼女は、私達の行動に酷く怯え……逃げ去った。だが、遠くには 行っていないという直感がある。彼女が迷いを確かに抱えているなら、 恐らく遙か遠くへ逃げていく事には……まだ躊躇いがあるはずなのだ。 迷いが残っている内に、私達は手を打たねばならん。残り時間は僅か! 「あの娘の“己は不要なガラクタ”という意識を、解きほぐさねば」 「でも、その為には説得材料も必要ですし……戦う事も必要ですね」 「……ボクも、そう考えていたんだよ。きっと言葉だけでは、ダメ」 「悪を為したのは事実ですの。それは、誰かが教えるべき事ですの」 私以上に、“妹”達が腹をくくっている事に驚いた。それは、ネット等で 検索して“ラグナロク”の実態と末路を知った故の事だろうか。それとも 『嫌われても助けたい』という、確固たる信念から生じた覚悟だろうか。 ここで破損のリスクを私が言い出すのは、野暮と言えるだろう。それだけ 皆の持つ“琥珀色の瞳”は、強い輝きを放っていたのだ。厳密には梓は、 翠色だが……神姫素体ならば、琥珀色に輝いている事は疑いようがない。 「ふむ……行動を起こす前に、少々相談したい奴がいる。皆で往くか」 「相談、ですか?あ、もしかしてあの人、ですね?大丈夫です……?」 「何、奴はああ見えて顔が広い。私達の知らぬ情報を握っている筈だ」 「じゃあ、一度行ってみますの。迷っている時間は殆ど無いですの!」 「それなら、早速支度するんだよっ。身なりを整えて、それから……」 ──────あの娘の孤独を、どうしても祓いたいからね……。 第二節:現実 地下鉄を乗り継ぎ、地上線にも乗って目指したのは……“あの”商店街。 移動中、私の頬は日の出よりも紅かったかも知れぬ。いや、そのな……? 『晶お姉ちゃん。そのケガでお風呂は危ないから、躯を拭くんだよ?』 『ま゛、いや待て!?そ、それ位は己で出来る!アルマ、ロッテッ!』 『ご心配には及びませんの~♪お風呂は、わたし達だけでも……ね♪』 『どうにかなりますから、マイスターは梓ちゃんにお願いして下さい』 ……というわけだ。笑うな!脚は無事なのだ、今すぐ蹴ってやるぞ!? その……いや、思い出すのは止めよう。不審人物にしか見えん。兎に角 身なりを整えた私達は、開店準備中の“ホビーショップ・エルゴ”へと やってきた。軒先で忙しなく働く、日暮めの姿が目に飛び込んでくる。 「お、久しぶりだね晶。そっちの娘は見た目からすると、葵ちゃんの」 「槇野梓なんだよ。日暮さん、宜しくね……今は、大丈夫なのかな?」 「へぇ……人間の妹さんも三姉妹か。ん、予約とか無いし大丈夫だよ」 「すまんな、どうしても今相談したい事が出来てしまったのでな……」 「手を怪我してるのか、晶ちゃ……ごふごふッ。まぁ、店に入りなよ」 アポ無しの訪問にも拘わらず、日暮は快く私達を迎え入れた。恐らくは、 私の“手”を見て『只ならぬ事態が起きた』という事を感じたのかもな? ともあれ店に通された私と梓は、各々の胸ポケットからロッテとアルマを 降ろしてやり、自分達もテーブルに付く。そして“相談”が、始まった。 「……へぇ。テロ支援用に作られた神姫の親戚が、秋葉原にね……?」 「貴様も何かしらのニュースで聞いたろう、連続爆発“事故”の事を」 「そりゃあね。で、晶はその真犯人を見つけた……どうするんだい?」 「無論、助けますの。匿うという意味ではなく、更正を試みますの!」 「危険物を隠匿している、なんて後ろ指を指されるかもしれないけど」 「指したい人には指させればいいんです……邪悪じゃない、ですから」 込み入った話でも、此奴ならば多少は腹を割って話せる物だ。そう言う “絆”こそが、何にも代え難い宝であると……私はつくづく実感する。 一通り状況を説明し終えた所で、日暮は唇を釣り上げて笑って見せた。 「正義の為にその娘を破壊する、とか言うよりはよっぽどいい態度だな」 「そうですね。晶さんは、そもそもそういう発想が出ないでしょうけど」 黙って話を聞いていたジェニーと共に、日暮が愉快そうに笑った。そう、 彼らも“正義の為”というお題目よりは、“現実と信念”を重要視する。 それが確実で、尚克広いコネを持っているだろうからこそ、頼った訳だ。 「実はさ。最近とある筋で、ちょっと面白い怪情報を聞いたんだけどね」 「……む?何だ、というか……そういう情報を迂闊に流して良いのか?」 「まぁ大丈夫さ、晶ちゃん達なら言いふらしたりしないだろ?っと……」 私の殺気に、日暮が手を振って発言を撤回する。良い心がけだ。ともあれ 日暮が“此処だけの話”として明かしたのは、実に興味深い情報だった。 それは彼女の……呪われし“姫”の、助けを求める叫びとも言える奇行。 「スウェーデン語で、警察署に“怪文書”のメールが届いたんだってさ」 「何?スウェーデン語だと!?……な、内容は何だ。どんな話なのだ?」 「“この世全てを呪ってやる”って一文だけ。犯行声明でさえないけど」 「それだけ、か……しかしだ、そういう物をわざわざ送る者は得てして」 「“心”の何処かで、止めてくれる事を望んでいるケースがありますね」 しかも良く聞けば、発信地は秋葉原のネットカフェなのだという。多分 あのロキが、回線を乗っ取るかPCを借用して送信したのかもしれん。 何故なら、該当する回線のPCは発信当時……使用されていないのだ。 私達は、確信した……彼女が止めてほしがっているという“想い”を! 「マイスター、そうと決まったら……ロキちゃんを捜しますのッ!」 「止めてほしいと願うなら、止めてあげないといけませんしね……」 「晶お姉ちゃん。それが分かったら、早速探しに行きたいんだよっ」 せがむ“妹”達に促され、私は立ち上がる。ロキの本心が垣間見えた今、 尚のことチャンスを逃したくないという想いが強くなっているのだろう。 そうなれば、私も全力を以て彼女らを支えねばならん。それが私なのだ! 「有無。日暮、重要な情報に感謝する。この穴埋めは、何れしよう」 「頑張ってくれ、晶。首尾良く助け出せたら、見せに来てくれよ?」 「神姫と似た仕様ならば、センターで充電しそうです……御武運を」 日暮の声援とジェニーの助言を受けて、私と梓は胸ポケットに神姫達を 収めて、“エルゴ”を飛び出した。電車が来るのも待ち遠しい。兎に角 最も近寄りそうな神姫センター……即ちアキバのセンターへ赴くのだ。 理論的かどうかは定かでないが、全ての可能性を試行する意味はある! 「……お願いなんだよ、ロキちゃん。ボクらの前に、もう一度だけ……」 「姿を見せてください、ロキちゃん……貴女を、どうしても助けたい!」 「ロキちゃん……どうか、どうか秋葉原に居て下さいですの……ッ!!」 ──────呪いを解きたいその想いが、皆を一つに繋ぐんだね。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2229.html
戦うことを忘れた武装神姫 その43 ・・・朝。 目覚ましの音に、久遠はけだるそうに体を起こした。 珍しく、神姫たちの助けを借りずともおきられたな・・・そんなことを考えながら立ち上がり、机上のクレイドルで寝ているエルガを突付いて起こす。 「おはよう、エルガ。」 ゆっくりと起き上がったエルガは、ごしごしと大きな瞳をこすりながら久遠を見上げると。 「・・・ごしじんさまのことは、にゃんとおよびすればいいでしょうか?」 着替えようとシャツを脱ぎかけていた久遠の動きが止まった。 「ちょ・・・え・・・エルガ・・・?」 「ごしじんさまのことは、にゃんとおよびすればいいのでしょうか」 セットアップの時の、まさに機械的な音声で応える・・・いや、反応するエルガに、久遠の顔色が変わった。 強制リセットがかかったのか、はたまた何かのエラーが起きたのか・・・戸惑う久遠だったが、ふと思い出したかのようにイオの姿を捜し求めた。 「あいつなら・・・神姫の技術的なことに関してはあいつが一番知っているから・・・何か、何か知っているはずだ!」 ワタワタとうろたえながら部屋を見回せば、イオは本棚に置かれたスコッチ辞典の脇に置かれたクレイドルで寝息を立てていた。半ば叩き起こすかのようにイオを起こす久遠。 眼を開いて顔を上げたイオに、久遠は少し上ずった声で話しかけた。 「イオ、起きて早々ですまないが・・エルガの様子がおかしいんだ、ちょっと診てくれないか?」 すると、イオは・・・。 「マスターの事は、なんとお呼びすればよいのでしょうか。」 再び、久遠の動きが止まった。 「イオ、い、いま何と・・・」 だがその声に対しても、 「マスターの事は、なんとお呼びすればよいのでしょうか。」 と、イオはエルガと同様に機械的な反応を繰り返した。 (まさか・・・。いや、しかし・・・) 全身の血の気が引くような感覚に襲われた久遠は、最後の望みであるシンメイを呼んだ。イオほどの知識はないけれど、神姫の損傷診断能力スキルは十二分に持つシンメイなら・・・っ! 「シンメイ、シンメイ! 起きているんだろ?」 今日は目覚まし当番のシンメイ、早めに起きて食卓辺りにいるはず・・・。だがしかし返事はない。どこにいるものかと探せば、食卓に置かれた大型の共有クレイドルの上でスリープスタイルに。 久遠の背中に、悪寒が走った。 恐る恐る声をかける久遠。 「シンメイさーん・・・。」 すると、シンメイは静かに顔を上げ、瞳を開けると。 「マスターの事は、なんとお呼びすればよいのでしょうか。」 * * * ・・・朝飯を食べることも忘れ、部屋のカーテンを開けることも忘れ。久遠は3人を食卓の共有クレイドルに乗せて再びスリープモードとして、傍らに置いたネットブックで必死に調査をしていた。だが有力な答えは得る事が出来ず。ぐしゃぐしゃと頭をかき、檻の中の熊のように家の中をグルグル歩いたかと思えば、再び座って検索・・・。 そうこうしているうちに迫る出社時間、久遠は大きなため息をつき、神姫たちと、神姫たちが寝ていたクレイドルをバッグに詰めた。 春らしくない寒空の下、神姫たちを詰めたバックを下げた久遠は、出社前に東杜田技研へ立ち寄ると守衛に頼みCTaを呼び出した。 しばしの後やってきたいかにも徹夜明けといった姿のCTaは、面倒くさそうにしながらも久遠の語った今朝の出来事をしっかりと聞くと、「調べるだけ調べてみる」と言いながら、神姫たちとクレイドルを久遠から預かった。 仕事にろくに手が付かず、どことなく上の空のまま時間を過ごし、退社時間になるや否や飛び込みの仕事もガンと拒否し、大急ぎで東杜田技研へ。 すると、図ったかのように入り口で待っていたCTa。 どうだったか、とバイクから飛び降りながら聞いてくる久遠に、CTaは軽く肩をゆすりながら笑みを浮かべて。 「基本的に異常は無しだなー。 ・・・ま、今日1日くらいは神姫たちを寝かせてやれ。明日には直るだろうよ。」 と言いながら久遠に、神姫たちとクレイドルが入ったカバンを手渡した。 そしてまた忙しそうに、工場内へと消えていった。 帰宅した久遠は、机の上にそれぞれのクレイドルを並べ、神姫たちを再びスリープ状態として並べた。 静かに眠る3人を前に、久遠は再びネットブックで、思いつく限りの調査を開始。神姫本体から、クレイドルの不調、果てはくれイドルにつながるケーブルへのノイズ干渉・・・。しかし有力な結果を得られぬまま、やがて久遠はいつの間にか眠ってしまっていた。 翌朝。 「にゃーさん、はやくおきるの! おきないと遅刻するの!!」 久遠の耳に響く聞きなれた声、そして耳たぶを引っ張る何か。 「にゃーん!! 起きないと、魚肉そせじ全部食べちゃうよ?」 ・・・間違いない、この声の調子は・・・ 「・・・エルガ!」 「うぉ・・・にゃーさんなにをするやめろくるしい・・・むぎぅ・・・」 久遠はエルガを手にしてほお擦りをしていた。 すると、今度は久遠の肘を何かが突付いた。 「あの、マスター。お楽しみのところ申し訳ありませんが、今日は早番だったかと・・・。」 そこには、タッチペンを手にながらPDAの週間予定表を指し示すイオの姿。 「良かった・・・元に戻ったのか・・・っ!!!」 イオの頭を撫でようと、久遠がエルガを開放し手を伸ばすと、 「もう・・・はやくしてください!今週は皆で朝ごはんを食べようって決めたじゃないですか。」 と、今度はシンメイが、エプロン姿でやってきた。 シンメイの姿を確認した久遠は、眼に涙を浮かべ、何も言わずに大きく頷き、神姫たち3人と共に食卓へと向かった。 ・・・しかし、昨日のアレはいったいなんだったんだろう・・・? CTaは何か知っている感じだったが・・・まぁいい、そのうち時間がある時にゆっくり教えてもらうとしよう。いまはただ、皆がいることを喜びたい・・・! そう考えながら、朝食のためのフレンチトーストを手際よく作る久遠なのであった。 * * * 「・・・ということが、3年前にあったのさ。」 H市のバー。久遠は、リゼと共に酒を楽しんでいた。 3年前の4月1日に、久遠に降りかかったエイプリルフールのネタ。今でこそ笑える話だけれどね、と〆た久遠の話を、リゼは興味深く聞いていた。 「それにしても。ずいぶんと手の込んだエイプリルフールネタを振ってきたんだねぇ・・・。」 と、小さなグラスに注がれたモルトを傾けるリゼ。 「まったくだよ。 『あの焦り具合がとってもキュートでした』なんて、しばらくの間シンメイにまで言われてたんだぜ。 しかも、その入れ知恵したのがCTaだっていうんだから、もうね・・・。」 「まー、確かに全員がリセットなんてなったら、ヌシさん悶絶して爆発するでしょ」 「そうだなぁ。爆発はしないまでも、どうかなるかもしれないな。」 久遠もまた手元のグラスを傾け、さらに数日後に、CTaの神姫である沙羅とヴェルナからネタばらしをされた時のことを教えた。 結局、エイプリルフールに絡めたネタ、演技だったわけだが、数日前から入念に準備を進め、CTaのところに駆け込むという流れまでも計算し、エルガは喋り方の練習までしたとか・・・。 それらの経緯を手元のグラスを空にしながら久遠が教えると、リゼは楽しそうにクスクスと笑った。 「ヌシさんは変に正直なところがあるからさ。向こうとしても『うわぁ!入れ食い!つられてやんの!』って感じだったんじゃないかな、クックック・・・」 「おいおい、リゼ。それはどういう評価なんだよ。」 苦笑いを浮かべた久遠に、ウインクで返したリゼ。 「で。今年のエイプリルフールは逆襲してやろうってわけだね」 久遠の意を汲んだリゼは、瞳に、隠しきれないワクワクした輝きを見せながら、にやりと笑みを浮かべた。 「そういうこと。 リゼはこういうイベント、好きだろ?」 久遠がメモ帳とボールペンを取り出しつつリゼに振ると、 「ふっふっふ・・・聞くまでもないだろう・・・ この作戦、リゼ様に任せなさい!」 自信満々な顔つきでびしっ!と人差し指を立てた。 「さぁて、逆襲として効果的で、しかし1日で毒が抜けて・・・あとで小噺のネタに出来るような、そんなエイプリルフールに出来るよう、しっかり仕込みをしようかね。」 今日は3月31日。バーの片隅、静かな時の中で。 酒を片手にした二人の作戦会議は、まだ始まったばかり-。 ニンゲンのココロに寄り添い、「嘘」をビタミンとしたいと想う神姫がいる。 そう、ここにいるのは、戦うことを忘れた武装神姫-。 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1070.html
武装神姫のリン 鳳凰杯篇その4 俺は"いつか"の時と同じように、だがあくまで冷静に。 リンを胸のポケットに入れてオーナーブースの扉を開けると全力疾走。 瞬く間に鶴畑大紀のオーナーブースへ。 扉を開ければ今まさにミカエルのリセットを行おうとしている鶴畑大紀の姿。 「待て、話を聞け!」 「ふん、俺のやることに口出しするな!こいつは負けたんだよ。最後のチャンスだったにもかかわらずだ。だから今ここで終わりにする。」 「待ってください!!!」 俺より大きい、そして何かすごみを感じさせるリンの声に鶴畑大紀は思わずたじろいた。 「…ええぃ」 がすぐにミカエルにつないだ端末の操作に入ろうとする、間に合わないかと思ったが急に鶴畑大紀の動きが止まった その視線の先にあるのは…ミカエルの瞳に浮かぶ大粒の涙だった。 「マスター、ごめん。でも私は…死にたくない」 「何を言ってる!! バトルに負けた時点でおまえは用済みなんだよ!だから…そんな顔するな」 鶴畑大紀の始めて見せる表情に少し驚きつつも、俺はミカエルと端末の接続を解く。 「おい、鶴畑の次男」 「…なんだよ。ミカエルのことか? もう知ったことか! マスターの登録は外すから勝手にしろよ」 「マスター…」 「もう俺はおまえのマスターなんかじゃない、どっかいっちまえ!!」 分かっていたとしてもそれがショックだったのだろう。 ミカエルは脱兎のごとく駆けだして行ってしまった。 「マスター、私に任せてください」 「ああ、頼む」 あっちはリンに任せて俺は鶴畑大紀に話しかける。 「おまえ、たしか兄貴に近づきたくて神姫始めたんだよな?」 「それがどうした! 武装は同じようにハンドメイドだし、戦績とかのチェックもいつもやってるよ。あと同じようにバトルに負けた神姫は取り替えてきた。悪いか!!」 「別にそれ自体が悪いわけじゃないだろう。ただな"ものまね"じゃあ一生かかっても兄貴には追いつけないぞ」 「m、ものまねだと!!」 「そうだ、おまえが今までやってきたことは兄貴がやってることを見よう見まねしてるだけなんだよ。まねだから兄貴がまず"それ"をしないと自分はなにも出来ない。だから追いつけない」 「なっ…」 「とりあえず、神姫をとっかえひっかえするのを今すぐやめろとは言わない。ただ、一度考えてみたらどうだ?」 「ふん…」 「俺が言いたいのはこれだけだ。あ、あと八百長なんてするなよ」 「うるさい!」 話を終えて(とりあえず言っておきたいことだけは伝えたつもりだ…なんで俺はこうもお節介かねぇ)オーナーブースを出ようとすると。 「まてよ。」 「なんだ?」 「…あいつに伝えてくれ。おまえはがんばってたことだけは覚えとくって」 「ああ。」 その言葉を聞いたとき、いつか彼の中で良い変化が起こってこれから生まれる「ミカエル」と以前より良い関係を気付くことが出いるのではないか?というのは俺の願望だろうか? そんなことを思いつつ、俺はオーナーブースを後にした。 ==== 試合の相手だった神姫のマスター、藤堂亮輔がブースを出たことを確認し鶴畑大紀はすこしだけ昔のことを思い出す。 それは5年前、まだ武装神姫が発売されることもなく世間での神姫に対する評価も今とは違っていた頃。 そして自分たち鶴畑兄弟の関係も今ほど緊張感を持ったモノでは無かった頃のことだ。 兄は高校で成績優秀。日本で一番の大学にも易々と合格できるだろうと担任から太鼓判を押されていたがまだ自分の進むべき道が決まっていなかったがそのときの兄は今ほど冷たい態度を取ることもなく優しかったのだ。 今でも世間一般の人の兄に対するイメージはまさに好青年。しかしそれはメディア等に出るときの"仮面"だ。 自分でもいつ兄が今のようにいつもぴりぴりした雰囲気をまとうようになったのかは解らない。 でも武装神姫が開発されてからであるということだけは明らかであり、また兄にあこがれを抱いていたはずの自分が今は逆に兄に対する争闘心のような感情しか持ち合わせていないという事実に気がついた。 兄の態度が変わったことに気がつき、その原因が何かさっぱりわからなかったそのために兄に直接聞くことが一番だと思ったのが2年前だ。そして今の兄と対等に話をするために自分は兄に追いつかなくては行けなかった。 でも学問とかじゃあ到底敵わない。でも…神姫ならばと思って自分も一度仮名を使い神姫バトルに参加してみた。 しかしそこで待っていたのは連敗に次ぐ連敗。たった一度の勝利が遠かった。 そして最後の試合で己の初めての神姫であったアーンヴァルが爪で引き裂かれる、その光景を目の前で見てしまった。 当時のバトルはリアルリーグしかない。それ故にプログラムで補正を行っていてもまれに神姫が帰らぬ身となることはあったがそれは自分の心に深い傷を追わせた。 その挫折から半年の間家に引きこもりがちになり過食症に陥った。 そして復帰後は本名で神姫バトルに。あのときの絶望をもう二度とを味わいたくないと無意識に思ったのか…当初の目的を忘れて目の前の敵をいたぶる。また強すぎる相手に対しては金を積んでの八百長試合など…自分の欲求である「勝利」を満たすことしか考えていなかったことを痛感した。 そのために何度神姫のコアを代えただろうか?リセットされる、廃棄されるときの彼女たちの気持ちはどうだっただろうか? また心が痛んだ。 そんあ自分が、今からでも変われば兄弟関係も変わるだろうか? でもまた挫折すれば…そういった恐怖が頭の中を駆けめぐる。 それでも、自分が兄に追いつける可能性があるのはこの神姫バトルしかない。苦しいかもしれないが、やってみようと思う。 それが鶴畑大紀のたどり着いた答えだった。 ミカエルはもう戻らない。自分がオーナー登録を解除してしまったのだ。 でも彼女が…いや今までの"ミカエル"が残したデータが生きている。 これほど心強いことは無かった。 鶴畑大紀は立ち上がる。上を目指すために。そして兄に追いつくために… ~鳳凰杯篇その5?~
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1548.html
新しき風と、揺れ動く錬金術師達(その二) 第三節:探求 翌日。私・槇野晶は、手早くシャワーだけ浴びると雑踏へと飛び出した。 食事はコンビニのパンで済ませ、爆破現場を中心とした馴染みの店主達と 幾度と無く情報を交換する。自分でも驚く程のハイペースでな。そんな、 忙しない移動と会話の中でふと後ろから掛けられた声に、動きが止まる。 「はぁ、はぁ……あ、晶お姉ちゃんどうしちゃいましたの……慌てて」 「ん?む、ロッテ……じゃない、葵か?アルマとクララも、一緒だな」 「当然ですよっ!昨日は失神してそれっきりだったじゃないですか!」 「……そして目が覚めた途端、人が変わった様に動き始めてるんだよ」 ……冷静になってみればそうだ。『出かけるぞ!』とだけ叫んで、私は 彼女らを置いて出てしまった。それだけ私が心理的に切羽詰まっている 証明なのかもしれないな……皆、一様に心配しているのが見て取れる。 「むぅ……では、お前達も一緒に来るか?このまま帰す訳にもいかん」 「あ、はい……ですけど、昨日の爆発火災に何か思い入れでも……?」 「マイスターは……物凄く険しそうな表情で、皆と会話してたんだよ」 「やっぱり、“アレ”繋がりなんですの?マイスターがそこまで……」 「リサーチが一段落したら、二人にも話す。今は言わんでくれぬか?」 唯一人事情を知るロッテを制して、私達は再び歩き始めた。“妹”達の 推察通り、私がここまで入れ込むのには歴とした理由が存在している。 如何なる言葉を紡ごうか、それを考えつつ秋葉原駅で聞き込みを行う。 「う~ん……昨日のアレねぇ。新聞では電気系統の故障とか言うけど」 「その口振りだと、やはりそう見えぬか。仮にも電気街の民だからな」 「そりゃそうさ。変圧器が弾け飛んだって彼処まで盛大には……ねぇ」 「ふむ……何か、鴉か猫の様な“影”が爆発の前によぎらなんだか?」 『ああ、居たねぇ。でも動物ってそういうの敏感だろ?』と、数軒目に 当たった事故現場向かいの電気店で、店主が語る。成程……あの一件の “捜査資料”通りだ。私が直感的に覚えた、“悪い予感”は的中した。 「そう、か……邪魔したな、有無……まさか、そんな事が……」 更に……客観的に見ても報道に矛盾がある、という現実。どう考えても “あの連中”に携わる存在が生き残っていた、という結論に行き着く。 運命は、私達を逃がす程甘くない様だ……不安と絶望が、私を覆った。 「どう……しちゃいましたの?マイスター、やっぱりこれって……あの」 「……ロッテや、最早全てを秘す事は不可能な様だ。もしもそうなれば」 「そう、なれば……マイスター、何を黙っているんです?ね、ねぇ!?」 「もしも、それを知らなかったら……ボクらはどうなっちゃうのかな?」 だがそれに押し潰されてしまっては、もっと享受したくない結末となる。 もう、黙っている事は出来なかった。痛みを伴っても、言わねばならん。 聞き込みをした店から離れ、私はそっと……雑踏に溶け込む様に呟いた。 「……お前達か、さむなくば私自身を不幸な目に晒す……最悪、喪う」 それは……秋葉原の雑音さえ消し去る程の、静寂に満ちた言の葉だった。 見ない振りをすれば、そうならないかもしれん。しかしそれは出来ぬ事。 私の宿命に、大切な“妹”達を巻き込む……その恐怖が心を凍えさせる。 何より、自分の口からそんな呪わしい予言が出る事が……何よりも怖い。 「……どういう、事ですか?マイスター、それって何なんですか!?」 「ボクらが……マイスターさえ、喪われるって何なのかな……ねぇ!」 「マイスター。そこまで言ったなら、確りと二人に話してくださいの」 「そのつもりだ。大凡ここまでの聴取で、何が起きていたかは掴んだ」 即ちあの爆発は事故などではなく、人為的な爆破による事件。そして、 それを実行したのは小動物の様に小さな“影”……恐らくは、MMSだ。 更に権力者はそれを隠し……恐らくは、秘密の内に解決を望んでいる。 止めに、落ちていたMMS用の紋章……私の記憶にある過去と照らせば、 ある程度結論が出る。故に、語らねばならぬ。私と歩姉さんの過去を。 「帰るぞ。これから大事な話をせねばならん……」 『……はい』 動揺する皆をとりあえず宥め、私達は無言のまま“ALChemist”に帰る。 地下へ降りるエレベーターを降りて、休業の看板が掛かった玄関を一瞥。 ……店の外観が、これ程寒々しく見えるのは初めてだな。ロッテと二人で “オーナー”の助力を以て開店した時も、もう少しは希望に満ちていた。 ともあれ重く感じるドアを開け、その足で居住ブロックへと入っていく。 「……さて、何から話すか。そうだな……歩姉さんの事から話すか?」 「そう言えば、そのお姉さんの事はあまり聞いた事がなかったんだよ」 「ええ、深く聞こうとしても……いつもはぐらかされていた様な……」 「ふふふ……なんだ、皆には見透かされていたのだな。では、語ろう」 「……マイスター……いえ、今は語ってもらう方が先ですの……ね?」 ──────出来る事なら、最期まで言いたくなかったよ……。 第四節:憧憬 私は、記憶の糸を辿る。それは暖かく残酷で、冷たく美麗で。甘く切ない 遠い遠い昔の物語だ。実際の年月からすればそうでもないのだが、私には 最早十年、数十年……いや、遙か前世に存在する様な、遠い記憶だった。 「歩姉さん……槇野歩は、私の本当の“姉”だ。立派な技術者だった」 「……技術者?ひょっとして、ボクらの装備に使われている技術って」 「そうだ。歩姉さんが立場上知っていた、ライバル他社の技術を含む」 「ゼンテックスマーズ社とか、アムテクノロジー社の……まさか?!」 「鋭いな、アルマや……そうだ、神姫の開発に携わっていたのだ……」 MMSの開発チームとしては責任者として、神姫開発の際にも……流石に チーフ等という地位には就けなかったが、それでも本人は幸せだった。 『玩具という枠に留まらない、人と共に歩める存在の創造』が出来る。 そう言って、本当幸せそうに……まだ幼い私に語ってくれた物だ……。 『ほら、晶ちゃん。これがプロトタイプの一人、クリスティアーネよ』 『これが前言ってた娘なの、お姉ちゃん?わぁ、可愛いなぁ~……♪』 『初めまして、マスターの妹さん……私が、クリスティアーネですよ』 優雅に一礼するその娘の事は、今でも覚えている。小さな胸に輝くのは 何処までも透き通った“六つの”透明なCSC。試作型故に、その気に なれば彼女は、起動したまま胸部ハッチを開く事も出来た。機能的には 今のCSCと代わらんと言っても、その輝きは酷く私を魅了したのだ。 「クリスティアーネ……?透明な、CSC……って、まさかこれが!」 「……そうとも。お前達の胸に納まっている宝石は、一部彼女の物だ」 「マイスターにプロトタイプCSCを継承したのは……歩さんかな?」 「有無。クリスティアーネは“デュアルCSC”タイプの、試作型だ」 それは、結局放棄されたプランの一つだ。CSCを六つも装填する事で より感情表現や演算機能を精緻にしようと、歩姉さんが提唱した機構。 結局……玩具として売り出すには煩雑だとして、実現はせずに終わる。 だがその為に、クリスティアーネのCSCは六つ存在する事となった。 大っぴらに存在を公表されぬ、失敗作という宿命も背負ったのだがな。 『え?クリスティアーネちゃん、売ってもらえなくなったの?残念だな』 『存在意義は無くなりましたが、それでいいのですよ晶さん……ね、歩』 『そうよ、晶ちゃん。彼女は、かけがえのない“妹”になれたんだから』 だがそれでも、否……だからこそ、彼女らはとても嬉しそうに微笑んだ。 とても幸せそうだったが、当時の私には不思議でしょうがなかった姿だ。 ……それは今の私からすれば無知故におぞましい、呪いの言葉でもある。 「何故『たかがお人形さんが大事な“妹”になっちゃうの?』と思った」 「……たかが、人形………………たかが……お人形さん……そんな……」 過去の事とは言え、私にそう思う時期があった事実。たったそれだけで アルマを打ちのめすには十分だった。クララも、戸惑った顔を見せる。 だが、ここで止める訳にはいかない。私は更に、切ない想い出を辿る。 『例え動いてなくても、彼女達には魂があると思うの。だから大事よ』 『じゃあ、晶なんかもういらないの!?お人形さんが大事なのッ!?』 『晶も大事。誰が一番かじゃなくて……大切な人はみんな大事なのよ』 『隣人と共に“歩む”』。公明正大だが一方で、技術には妥協しない。 MMS……更に神姫が隣人として共に“歩める”未来を創る。それこそが 歩姉さんの志だった。使命感に通じる純化した“想い”は本物なのだ。 『だから何時かこの娘達も、胸を張って生きていける未来が欲しいの』 『……ごめんね、お姉ちゃん。クリスティアーネちゃん……私、私っ』 『いいのですよ。そう想う事も自然な動作です。晶さんは、悪くない』 たかが人形と見下す私。それを赦して、しかしながら自分の志を崩す事の ない歩姉さんと、そんな姉さんを誠心誠意支えていくクリスティアーネ。 彼女らの“愛情”と“信念”に、当時の私は強い影響を受けていたのだ。 今でも、彼女らの面影を思い出す度に……私の胸は、震える思いがする。 「でも、クリスティアーネさんのCSCがボクらの胸にあるって事は」 「そうだクララよ……歩姉さん共々、彼女ももうこの世には存在せぬ」 歩姉さんが故人である事は、折を見て少しだけ話していた。だが、何故に 彼女が死んだのか……そして、クリスティアーネも何故居ないか。それは ロッテしか知らぬ事だった。当然だ、アルマとクララには……歩姉さんの “妹”が居る事さえ、話していないのだ。己のCSCの由来は、ロッテが オブラートに包んで話したが、恐らく彼女の物とは知らなかっただろう。 「……じゃあ、何故ボクらにそれが継承される事になったのかな……」 「やだ……もうやめて、クララちゃん……もう、聞きたくない……!」 「聞かねばならぬ……私の嘘偽りを、弱さを……知ってもらわねばな」 ──────本当なら、喪いたくなかったのに……。 第五節:言葉 恐らくHVIFを装備していたら、アルマは涙を零し泣き叫んだだろう。 全てを知っているロッテ……葵でさえも、目尻に涙を溜めて堪えている。 呆然と私に質問し、そして答えを聞くクララとて混乱振りは同様だった。 「クリスティアーネが試作のみに終わると決まって、数週間後の事だ」 「その頃は、マイスターとクリスティアーネさんの仲もいいのかな?」 「嗚呼。今のお前達程ではないが、同じ“妹”として陽気に遊んだぞ」 なんと残酷な事を言うのか、と自嘲する。しかし、これから更に残酷な 現実を語らねばならない……私は、水を一杯呑んでから暴露を続けた。 『晶ちゃん、お姉ちゃん達ね。これから暫くヨーロッパに行くのよ?』 『ヨーロッパ?えっと、フランスとかイタリアとかあっちだよね……』 『はい。更には北欧を回り、神姫のフィールドを世界に広げるのです』 つまりは開発チームとしての海外出張だ。欧米の技術を学んで、更には 神姫を売り込めそうな土壌があれば、それを調査して営業担当に回す。 そして完成した神姫をMMSの次世代型として、世界中に広めていく…… 当時の私にはよく分からなかったが、歩姉さん達は確かにそう言った。 『心配しないで、ちゃんとお土産買ってくるから。お留守番出来る?』 『私、ピザがいいっ!おっきいの一杯買ってきてね、お姉ちゃん達♪』 『冷めてしまいますよ、晶さん。まぁどうにかしましょう、マスター』 『くす、そうね。おっきなピザを買ってきてあげる、楽しみにしてね』 他愛のない、少女らしい……というか『色気より食い気』という願い。 だが、私はこの言葉を生涯呪う事となる。ピザは問題なく喰えるがな。 子供らしい純粋な日々は突如……暗い雷雨の日に、破局を迎えたのだ。 『晶さん、ちゃんと聞いてください。歩さんが、亡くなられました……』 『嘘だよ!?だってお姉ちゃん達、イタリアでピザ買ってくれるって!』 『……そのイタリアで、列車の爆破テロに巻き込まれて死んだんですよ』 “オーナー”の一人となる弁護士……歩姉さんの遺産管理者は、私の前で そう言った。躯が弱く、なかなか逢えない両親に頼る事はなく。彼女は、 弁護士に己の身辺整理を依頼し、その全てを私に託すと決めていたのだ。 だが、膨大な機材や資料・データ類を得ても嬉しくはない。何故ならば。 「……爆破テロを起こした組織はな、MMSを爆弾の設置に利用したのだ」 「MMSを……テロに?そんな事、する人……いるのかな……嘘だよ……」 クララが青ざめる。己からは遠い出来事であった、世界で起きる悲惨に。 だがそれは、事実だ。弁護士が善意で、個人的に調べ上げてくれた真相。 北欧のとある犯罪結社が、MMS……というよりも、神姫の試作品を独自に 解析して、“人命尊重”を売り文句としたテロ兵器として開発したのだ。 そしてイタリア列車爆破テロは、その試金石として利用された事件だと。 『なんで、なんでこんな人形が大事だったの!?それで殺されたのに!』 私は、泣いた。恨んだ、呪った。MMS等、神姫等この世に産まれるなと。 そんな木偶人形を信じた為、結局同じ“神姫”に殺された姉の愚かさを。 そして、遺品として戻ってきたペンダントとクリスティアーネの残骸を。 ペンダントは、今も私の胸に輝くそれだ。そして……残骸のみが残った。 他にもトランク等、幾つかの品と荼毘に付された遺灰はあったがな……。 『……あなたが居たから、お姉ちゃんが……お姉ちゃんが死んだの!』 『──────そう、ですね……あの人は、神姫を思い続けてくれた』 『え!?まだ、動いてる……このッ!壊してやる、絶対壊してやる!』 四肢を喪い、顔も見られぬ姿となったクリスティアーネは……それでも、 私の怨嗟の声を聞き、僅かに首を擡げた。未だに機能が生きていたのだ。 私はその見窄らしい塊を叩き潰そうと、憎悪に身を浸す。しかし彼女は、 クリスティアーネは、決して畏れずに……話だけ聞いてくれ、と宥めた。 『マスターは……歩さんは、神姫を想う故に命を落としました……でも』 『でも、何よ。何が言いたいの……お姉ちゃんは、何も言わないのに!』 『いいえ、言いました……“恨んではいけない、隣人と共に歩もう”と』 例え己が殺されても、それを恨んではいけないと。だから、大事な人々を 大切にして、そうでない人も憎まずに生きていってほしいと。それこそ、 紛れもなく“歩姉さんの遺言”だったのだ。私は、彼女を抱いて泣いた。 『眠くなってきました……マスターの最期の言葉、伝えられてよかった』 『ごめん、ごめんね!壊すだなんて言って……痛かったのに……ッ……』 『私の、CSCは無事です……これを、大切な娘に使ってあげて下さい』 そんな私を、クリスティアーネもまた赦して……そして機械的な電子音を 吐き出してから逝った。神姫……即ち機械である自分が何かを残すなら、 それは部品と“想い”に他ならない。そう信じ、私に託して滅びたのだ。 単なる硝子玉という以上に、それは大切な人々の想いを帯びる“至宝”。 「故に……クリスティアーネから外したCSCが、お前達のそれなのだ」 「ぁ……ぁあ……そんなの、信じられないよ……マイスター……ッ!!」 「クララ!?アルマ……アルマも居ない、途中で逃げ出したか……!?」 「任せてくださいですの、マイスター……後は、神姫のわたしに……ね」 「すまないな、葵……いや、ロッテや。暫くしたら、皆の様子を窺おう」 ──────残酷な過去を見つめて、でもだからこそ……ね。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/505.html
戦うことを忘れた武装神姫 その16 ・・・その15の続き・・・ 何年前になろうか。 ・・・武装神姫、一般発売。 その翌年、バトルサービス開始。 各地で繰り広げられる熱い戦い、築かれてゆくつながり。ペアが生まれ、 チームが編成され・・・ 楽しむために戦う、仲間と集うために戦う。 そして・・・ 名誉と、賞金のために-。 スポンサーが付き、賞金のかかる試合もぼちぼち増えてきた頃。 とある町の、小さなチーム。彼らもまた、神姫バトルで賞金を稼ぐ者たち のあつまりであった。 彼らは、全員がストラーフのみを所有し、「黒い嵐」とも呼ばれた強豪で あった。 その中で、試合へ出向く神姫たちの、トレーニングをする際の 相手だけを務めるストラーフが居た。 特定のオーナーを持たず、 名前も与えられず。 表舞台へと向かう仲間が、新たに編み出した技を確かめ、オーナーたちが 試作した武器や技術を試すため・・・。 勝利を収めても、誉めてくれるオーナーはいない。 負傷しても、慰めてくれるオーナーもいない。 ただ独り、ひたすらに、黙々と、与えられた仕事をこなす。心を持つこと なく、まさに「機械」としての日常-。 そんな毎日を送る彼女を、一人だけ「仲間」と呼ぶ者がいた。 チームのリーダーで、最も成熟した心を持つストラーフ。 手加減のない 模擬戦のあとでも、必ず彼女のことを気にかけ、破損があろうものなら、 自らの損傷は後回しにして、真っ先に彼女の修復を申し出ることも。 「貴方のおかげで、私たちは常に頂点に居ることができるんですから。」 これが、リーダーの口癖だった。 しかしオーナーたちの中で、その意味を理解していた者は-、いなかった。 「毎日のように貴方は私たちと、対等の戦いを繰り広げ、次々に渡される 新型機器を、いとも容易く扱える。 もっと自信を持ちなさい。 ソロの 対戦なら、貴方が最も強い神姫かもしれませんよ。」 ある日、模擬戦で彼女が勝利を収めた際、リーダーが彼女に言った言葉。 いつも日陰者と自称していた彼女にとって、今までにない程の、暖かく、 熱い言葉-。 胸に、こみ上げる思い。 オーナーを持たない彼女に「こころ」が、芽生えた瞬間-。チームリーダー の証である、蠍のマーキングが施された自らの頬を指しながら言った。 「いずれ貴方も、表舞台で先頭に立てるといいですね。」 そして、この会話が、彼女とリーダーの最後の会話となった。 翌日の公式戦終了後、リーダーを収納したボックスが、何者かに持ち去ら れてしまったのだ。 リーダーのストラーフを失ったチームは、徐々にランクを下げていった。 それに比例するかのように、彼女への仕事-、いや、仕打ちと言った方が いいかもしれない- は、凄惨なものへと変化を遂げた。 勝つために作った力任せ・反則スレスレの改造武器を持たせ、彼女を動く 標的として-。 たとえ装備が破損してもそのままに、自らでの簡易修復 が限界の毎日-。 やがて、彼女自身が損傷を受け、まともに動く事すら 出来なくなった。 鍛錬の相手が居なくなり、チームはついにランク外へ と陥落。。。 ここで、ようやく彼女の存在意義、存在の大きさに気づいたオーナー連中。 息も絶え絶えの彼女を、大急ぎで東杜田の片隅にある工場へと持ち込んだ。 どんな損傷を受けたロボットをも生き返らせる技術者がいるというウワサ を聞いて・・・。 だが。 そこの技術者の答えは「修復不可能」との返答。長期間、内部損傷を放置 したため、コアへも損傷が生じてしまった、というものだった。 オーナー連中が出した結論は-、 チーム解散。 リーダーを失い、陰の立役者を失ったチームが、勝ち続けることは不可能 だった。 オーナーたちは、それぞれの所有する神姫を手に、それぞれの 道へと戻る-。 オーナーを持たない彼女は・・・ 研究所へ残された。 オーナー連中が立ち去り、静かになった研究室の片隅。 彼女を診断した技術者が、彼女を手に取り、にやりと笑みを浮かべた。 「・・・お前のことはよく知っているぞ。 リーダーが、徹底的に誉めて いたからな。」 いきなりのその言葉に、彼女は目を丸くした。 「時折来ていたんだよなー、あいつ・・・。 本当にいいやつだったよ。 無事でいてくれればいんだけど・・・ お前もそう思うだろ?」 彼女に、涙がわき上がった。 機械の身体であるはずなのに、何故、涙が 出るのだろう・・・。訊かずとも、技術者がすぐに答えた。 「泣いたな。 お前は、今や機械じゃない。 立派なひとりの『神姫』と なったからだよ・・・。」 ぼろぼろの身体をそっと撫でる技術者。はじめて、信頼できる「人間」が、 目の前にいる・・・。 自らの動力は、もう息絶えようとしているけれど・・・。 今までがんばってきて、良かった・・・。 「さて。と・・・って、こらこら! 一人で感動シーンをやってるんじゃ ないよ。 お前はまだ終わっちゃいないんだから。」 ごりごりと、ちょっと乱暴に頭を撫でる技術者。 「ああ言えば、あいつらはスンナリ納得して、お前を置いて帰るだろうと 思ったんだ。 ま、それもこれもあたしの腕と信頼があっての事だけど。」 そう言いながら、技術者は彼女を作業台へと運んだ。山と積まれた工具、 機材、そして素材。 「お前を見捨てるようなやつらは、ホンモノの神姫使いじゃないよ。私が ホンモノの神姫使いと巡り合わせてやる。 そうさ、これからがお前の、 本当の『武装神姫』として生きていく時間になるんだ-。」 と、技術者が言った。 彼女はそれが何を意味するかすぐに理解できた。 まだ、いける。 明日が、ある・・・!! 「・・・なんだけどねー。 あんたを救う代わりに、あたしの実証実験に 少し協力しなさーい! それがあたしへの報酬さっ!」 突如、小悪魔のような笑みを浮かべた技術者。 だが、そこに悪意は一切 なく、むしろ彼女への愛情のある顔付きだった・・・。 先とはうってかわり、機材を駆使してのテッテー的な破損個所の洗い出し を行い、詳細な修復計画を立てた技術者。まずはメインボディの修復作業 を行こととし、いったん動力を落とす旨を彼女に告げた。音声回路も破損 しかけ、かすれた声しか出せななくなっていた彼女は、ノイズ交じりの声 で、ひとつのお願いをした。 -いままでの記憶を、全て残してほしい- その願いに、技術者が目を丸くした。 本当にいいのか?と、問いかける 技術者に、彼女は強い意志を持った眼差しで答えた。 -記憶を消したら、私ではなくなってしまう- その答えに技術者は再びにやりと笑みを口元に浮かべると、彼女をそっと 撫でて、やさしく言った。 「へっ・・・泣かせる神姫だなぁ、お前は。 よーし、わかった。あたし がお前を、世界で一番の神姫にしてやる。 人間をオーナーにしてしまう くらいの、強く、かっこいい神姫に-。」 数日後。 彼女が目を覚ますと、初めて見る顔の人間がいた。 彼の肩や 胸のポケットには、3人の神姫が。猫、犬、白・・・。 「・・・なーるほどね。 そりゃー大変だったねぇ。」 「いいやつだよー。・・・ちょっと意地っ張りだけど。」 「いやぁ、構わない構わない。 話を聞いたら、なおさらウチに居て欲し くなったよ。」 その男は、技術者と親しそうに会話をしている。 やがて一段落付いたの だろうか、彼女の元へとやってきた。 と、彼女はひとつの異変に気づいた。 彼は、私のマスターだ・・・。 すぐに、認識が出来た。 そう、正式な 起動を行い、造られてから、はじめての「マスター」を得たのだ。。。 ・・・私の・・・マスター・・・ もう、独りでは・・・無いんだ・・・!!! 「どうも、はじめまして。 君のマスターになる、『ヒサトオ』っちゅー 者ですわ。 んで、こっちがエルガ、シンメイ、イオ・・・。」 それぞれの神姫が、彼女の前に降りて会釈をする。 「・・・ところで、君の名前は?」 うれしさがこみ上げる中、彼がふと尋ねた。 返答に困る彼女。 今まで、 名前で呼ばれたことなど無い・・・。 すると、技術者がさらさらと紙に文字を書いた。 「日はまた昇る、の『Rise』から音だけもらって、ちょいと綴りを変えた んだけどねー。 どお? いいでしょ。 なんたって、この数日かけて 考えた名前なんだからねっ!」 涙でにじむ視界に、ぼんやりと、しかしはっきりと浮かび上がった文字。 それは-。 「 -Lize- リゼ=ストラーフ 」 ・・・>続くっ!>・・・ <その15 へ戻る< >その17 へ進む> <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1457.html
人物紹介 その他大勢 人物紹介 その他大勢美月 べるの(みつき? べるの) ノエル 美月 べるの(みつき? べるの) 性別:女 年齢:14 血液型:B さる大手のおもちゃ会社の社長令嬢 青いツインテールな髪をしており、普段着は父親の趣味かゴスロリである 性格は高飛車で唯我独尊な性格をしておりバトルでは金に物を言わせ神姫に最新やワンオフの兵装を装備させている ノエル タイプ:ツガル CSC:―・―・― ランク:C べるのがマスターであるサンタ型神姫 基本的にどの距離でも戦闘できるように調整されており、さらに武装も最新兵装を使っているため負けることはほぼなく常に常勝している しかし、実戦経験の少なさからか技量が浅さや突発的な状況に対する判断力が足りない部分等の問題点はある また上記のように最新兵装を使っているため標準のツガルセットを使うことは余りないようである 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2563.html
ここには「美咲さんと先生」のいろいろな設定などを書きたいと思います。 人物 「先生」 :名字は竹田。齢四十に近い男性。常に敬語で話すために真面目な人間かと思いきや、中身は変人である。だが、オリジナル装備製作やプログラムの組み立て、神姫のメンテナンス等をこなせることからかなりの知識人であると思われる。株式会社「カサハラテクニカル」の神姫用玩具開発部門の主任。結果重視の会社であるため、特定の拘束時間はないが出勤日数は二十日間以上と決められている。まれに一日五分しか会社にいないこともあるらしい。フブキタイプ・美咲のマスター。メガネはかけていない。 「カエデ」 :本名・一条 楓(いちじょう かえで)。どこにでもいる普通のOL。薄給から何とかやりくりして神姫を楽しんでいる。会社の休日は火曜、日曜。アーンヴァルタイプ・エルスのマスター。幸薄感に溢れている。 「ケイゴ」 :本名・柏木 圭吾(かしわぎ けいご)。ニートに近いフリーター。親が甘いので神姫もほぼ親の金で楽しんでいる。ただ、嫌味のないさわやかな性格であるため、あまり疎まれてはいない。触手好き。マリーセレスタイプ・ステルヴィアのマスター。ぽっちゃり系。 「エンドウ」 :本名・遠藤 健太郎(えんどう けんたろう)。大学生。先生を師として仰ぎ、尊敬している。アルバイトをしながら大学生活と神姫を満喫している。セカンドリーグのトップクラスに在籍してるので、金銭的に余裕がある。大学生特有の自由時間を生かして全国各地を回り武者修行をしている。ウェルクストラタイプ・『弾丸』のフェフィーのマスター。精神面は幼め。 「ケイイチ」 :本名・東雲 慶一(しののめ けいいち)。高校生。四人の神姫を維持するための電気代や経費を稼ぐため、言うことをあまり聞かない姉妹を引き連れ日々放課後バトルに明け暮れる。バトルセンスはピカイチであり、特に多対多でのチーム戦や混戦においてその真価を発揮するタクティカルコマンダー。今現在は親元を離れて一人暮らしであるが、騒がしい毎日を送っている。アルトレーネタイプ・イール、マオチャオタイプ・アルマ、アークタイプ・マリネ、アルトアイネスタイプ・ネムのマスター。女難の相ならぬ神姫難の相が出ている。 「タチバナ」 :本名・立花 菊子(たちばな きくこ)。先生と同じ「カサハラテクニカル」の社員。神姫武装開発部門の若き主任(年齢は二十代中盤らしい)。立花財閥のお嬢様だが神姫に没頭するあまりに勘当される。彼女が開発する武装はどれも派手さや見た目に重点を置いたものであるが、それに詰め込めるだけの性能を詰め込んだ、高性能だがピーキーなものがほとんど。故にカサハラ製の武装は目立ちたがりの玄人が好む傾向にある。苦いものが大嫌いで、タバコは吸えないがくわえるのは好き。ジュビジータイプ・ホムンクルス、他「カサハラテクニカル」の社員神姫のマスター。残念美人。 「ムースのマスター」 :本名・柊 麻昼(ひいらぎ まひる)。女子高生。明るく元気な女子高生だが、時々ブツブツと独り言を呟いてはニヤリと笑うちょっとアレな子。ゲームの類が大好きで、それが高じて武装神姫に手を出した。友人に機械に強い人が居り、武装の製作を委託している。 神姫 「美咲さん」 フブキタイプ。初期に販売された神姫。比較的角ばった作りの初期素体のままなことをちょっと気にしている。より人間の少女らしい丸みを帯びた新型に換装することを先生に申し出たが、「今のままがいいです」と却下された。どんな武装も使いこなし、どんな間合いにも対応するオールラウンダー。比較的高次元な戦いにも対応できるが、並列処理能力は低いので臨機応変には戦えない。先生の的確な指示が勝利の鍵。 「エルス」 アーンヴァルMk-2タイプ。美咲のギターの副作用の媚薬プログラムのせいでおかしくなったと皆は思っているが、実は初めから百合属性。今までは抑えていたが、プログラムによって解放されただけ。アーンヴァルの標準通り飛行特化の射撃重視装備を施されている。回避以外特に目立った性能はないバランス型。マスターであるカエデ自身があまりいいセンスではないため、実力はサードリーグクラス。だが本人達は気にしていない。 「ステルヴィア」 マリーセレスタイプ。自称地区一の触手使い。マリーセレスの標準装備の触手をカスタマイズし長くしている。触手マイスターになるのが夢。装備はマリーセレスの標準装備にカスタマイズした触手のみの近接格闘型である為、飛行型の敵には弱い。が、地上戦ならばかなりの戦闘力を見せる。マスターであるケイゴはステルヴィアに指示を与えるより、ステルヴィアに敗北しチョメチョメされる相手を見ることに力を注いでいるらしい。 「フェフィー」 ウェルクストラタイプ。『弾丸』の二つ名をもつ。一度CSCを破損し交換されているため、今のフェフィーは記憶を継承した二代目である。コアとCSCの相性が悪かったようで、知らぬ相手には無愛想になり、BL好きになってしまった。さらに、全ての神姫がBL好きだと思い込んでいる為、知り合った神姫に普通にBL話を持ち掛け、どん引きされるのだそうだ。故に友好関係はあまりよろしくない。格闘特化のCSCに合わせて、装備も格闘特化型である。足に備えたバッタの足のようなシリンダーは瞬発力を増加させるための装置で、バネのように足を弾くため高機動用モーターよりもバッテリーの消耗は低い。が、素体への反動は大きい為、こまめに整備をしないと素体自体が破損する恐れがある代物。手足に装備している武装は、エネルギーを内部にて圧縮し、攻撃時に解放させることにより威力を数十倍させることができる。冷却装置は付いているが、すぐに熱を持つので一度の解放ごとに表面を開き熱を逃がさなければならない。スカートバーニアは加速力増加と空中での姿勢制御を兼ねている高出力低持続性の小型バーニアである。内部には小型のエネルギータンクを備え、戦闘時の稼働時間を僅かに延長させている。ちなみにこれは本戦仕様であり、軽い手合わせ等の手加減用装備も別に存在している。 「イール」 アルトレーネタイプ。仲良し四姉妹(笑)の長女。標準のアルトレーネの性格であり、マスターであるケイイチに従順である。が、熱しやすい性格で「牛丼」と呼ばれることを何よりも嫌い、頭に血が上ると冷静さを欠く。武装は近接特化で、紅黒のダークカラーに塗装されたアルトレーネの標準アーマーに七つの細剣を装備するのみ。一対一では勝率はあまり高くないが、多対多の混戦時には無類の強さを誇る。その強さの秘密はアーマーにあるらしい。待て次回!(←未定)末妹であるネムが可愛くてしょうがない。 「アルマ」 マオチャオタイプ。仲良し四姉妹(笑)の次女。性格は捻じ曲がっており、常に他人に突っかかる。ケイイチに起動させられたわけではなく、色々あって人の手から手に渡り歩き、最終的にケイイチのところにたどり着いた。武装は紅黒のダークカラーな標準装甲にカスタマイズされたドリルとレーザー刃の切れ味抜群なレーザーソー。攻撃力はとても高く、さらにマオチャオ特有の機動力の高さで地元神姫センターのトップに君臨する。特に妹のマリネとのコンビは強力で、一部ではそのカラーリングと強さに『夕闇の旋風』と呼ばれている。普通のマオチャオと違って辛いものを好む。末妹であるネムにデレデレである。 アルマ語講座。 「~無い」という否定形は「~にゃー」となる。例「馬鹿じゃないよ」→「馬鹿じゃにゃーよ」 一人称・二人称・三人称。「おまえ」は「おみゃー」。「私」は「あちし」。「あいつ」は「きゃつ」。「こいつ」は「こやつ」 語尾ににゃーをつけるかどうかは気分らしい。「な」を「にゃ」にするかどうかも気分らしい。 「マリネ」 アークタイプ。仲良し四姉妹(笑)の三女。性格は粗暴。一人称は俺。恐ろしく口が汚く、言語矯正プログラムによって規制音が鳴り響く。普段マスターであるケイイチの言うことには馬耳東風だが、バトルの時には忠実である。武装は紅黒のダークカラーなイーダのトライクのカスタム品である。走行可能ギリギリまで積載した火器による砲撃が得意で、地元神姫センターで二位の実力を誇る。アルマとのタッグでは負け知らずで五十連勝以上はしているらしい。末妹であるネムにゾッコンである。 「ネム」 アルトアイネスタイプ。仲良し四姉妹(笑)の四女。仲良し四姉妹(笑)が仲良しでいられるのは彼女のおかげ。性格はかなり幼く甘えん坊で泣き虫ではあるが、芯は強い。武装は紅黒のダークカラーで姉妹たちとおそろいになるように塗りなおされているが、彼女はバトルすること自体は嫌なので装備したことは無い。強いて言うなら、相手の母性や保護欲を掻き立てるその性格が最大の武器。実質一家の支配者だが自他ともに自覚はない。 「ムース」 ストラーフタイプ。クールな印象をあたえるしゃべり方をするが、頭の足りない子。普段から黒いロングコートを愛用している。武装はストラーフの標準装備である強化脚とサブアームに、昔のゲームの主人公が使用していたケルベロスと呼ばれる大型二丁拳銃とデスホーラーという火器満載の棺桶を装備する。それらの火器を自在に使いこなし、セカンドリーグの上位に在籍しているが、そんな装備よりも歌のほうがより強力で凶悪である。 「ホムンクルス」 ジュビジータイプ。派手好きで自意識過剰で自信過剰で自己中心的でポジティブでハッタリ屋。ファーストリーグランカーだが順位は高くないらしい。詳しい記述は未登場なので避ける。 その他 「ギタにゃん」(CV若本規夫 推奨) 『ニャンたるロック』ギター担当にしてリーダー。音楽に対して固有の価値観を持ち、それにそぐわないものには容赦がない。 「にゃんベース」(CV千葉繁 推奨) 『ニャンたるロック』ベース担当。ノリがいいともっぱらの評判。 「ぬこドラム」(CV大塚明夫 推奨) 『ニャンたるロック』ドラム担当。性欲はもてあましてない。 「にゃんセイザー」(CV子安武人 推奨) 『ニャンたるロック』シンセサイザー担当。超クール。